オークション理論の主要なところがよくまとまっている。
副題には "ネットオークション必勝法" と勇ましく書かれているが、Yahoo! オークションなどで広く行われている2位価格オークションでは自身の評価値そのままを狙い撃ち入札するべきという当たり前と言えば当たり前の結論が導かれている。
数学的に興味深いのは、2位価格オークションと1位価格オークションの様に異なる形式のオークションが戦略的同値であり、正しいビッドシェイディングが行われれば売り手の期待収入も買い手の余剰も同一となるというところ。
本編は数式は少なめで構成されているが抽象度が高いので、ある程度数学の素養が無いと読むのが厳しいかもしれない。巻末の付録 (と言ってもかなりボリュームがある) にはがっちりしたオークション理論の解説と数式もあるので、本格的にオークション理論やゲーム理論を学ぶ前のウォーミングアップとしても。
翻訳は所々読みにくいところがあるが、共訳なので質のばらつきは仕方ない。
昭和的価値観を廃してどう生きるべきかを示した本。タイトルは前作の若者はなぜ3年で辞めるのか?が売れたために営業的な理由でつけられたものらしく、内容とはあまり関係がない。この手の労働関連の本をある程度読んでいる人には目新しい情報は少ない。
完全に時期を逸してしまった気もするが、鳩山由紀夫前首相の野球のORを読んでみた。まだセイバーメトリクスもほとんど普及していない1979年の論文でありながら、野球の数理的解析に手を出していたという目の付け所は素晴らしい。政治家としてはともかくとして、研究者としては優秀だったことが良くわかる。
論文の柱となっているのは、セ・リーグの現役の全打者の通算成績から出塁率、四死球率、単打率、二塁打率、三塁打率、本塁打率だけを抜き出して、リンゼイ・パルマーモデル相当のものを再構築してしまおうという試み。単打で必ず二塁走者が生還するなどの強い仮定を置いているため二塁に走者を置いた場合の得点期待値がやや高いものとなっているが、概ねリンゼイ・パルマーモデルに近い値が得られている。
その後は盗塁やバント、ヒットエンドランに必要とされる成功率が示されているが、いずれも最初の二塁走者の過大評価を引きずっている様に見える。四死球や本塁打の得点能力への貢献度評価も同様。
続いてOERA (Offensive Earned Run Average) の評価。これは単に日本の主力打者に当てはめて計算してみたというだけ。
最後に投手起用も扱っているが、これがなかなか興味深い。イニング毎の投手の平均自責点がバスタブ曲線に似るのではないかという予想は検証が不十分ではあるものの興味深い。総期待自責点を最小化する投手ローテーションを動的計画法により求める案についても同様。
しばらくぶりにtDiaryのバージョンアップを行った。
今回は2.2.2から3.0.1へのメジャーバージョンアップだが、あまり面倒な手順はなし。 tdiary.conf等の設定ファイルもほぼそのまま使えるし、目玉のUTF-8化もユーザが意識する必要はほとんどない。
「今時の経済学って何をやってるの?」という素朴な疑問に答えてくれる本。
あまり読みやすい本でも、読んで面白い本でもないが、経済学というものが浮世離れした数式を扱うだけの学問ではないということはよく伝わってくる。
著者の欄にはJohn Dewanの名前しか書かれていないが、実際にはBill Jamesが大きく関与している。
実は野球の守備に関する統計は、ここ130年ほど進化していなかった。すなわち、試合数、刺殺、補殺、失策、守備率といった野球の黎明期に考えられた指標が惰性で使われ続けてきた。本書は、それらに代わる新たな守備指標を整備しようという野心的な試み。主に以下の4つの指標が用いられる。Relative Range Factor以外は地道な画像分析を基に算出した数値なので個人で検証するのは難しい。
まず初めにPlus/Minus System。全打球の方向 (Vector) や速さ (Velocity) を記録しておき、50%未満の確率でしか処理されなかった種類の打球をどれだけ処理できたか (Plus) や、50%以上の確率で処理された打球をどれだけ取りこぼしたか (Minus) を数値化したもの。要するに、同じ様な性質の打球を、同ポジションの平均的な選手に比べていくつ余計に処理できたかを見る。守備能力を測る上で優れた指標ではあるが、バント処理や一塁手の捕球技術などは対象外となることに注意が必要。
続いて安打の場所の統計。例えば遊撃手の場合は、内野安打 (infield hits) 、センター前 (up the middle) 、三遊間 (in the SS/3B hole) 、遊撃手と左翼手の間 (in short left) の安打の合計の多寡によって評価される。もちろん、これは投手や近隣のポジションの選手の能力に左右される数値なので、個人成績と言うよりはチーム単位での評価に適している。
三つ目はRelative Range Factor。1976年にBill Jamesによって提唱された指標で、イニングあたりのアウト寄与数を集計したもの。この指標の利点は何と言っても伝統的な刺殺や補殺の値から算出できるため、映像が残っていない過去の選手にも適用できるという点。以前より、投手の奪三振率の影響を受ける、ゴロ/フライ比率の影響を受ける、投手や打者の左右の影響を受ける、といった欠点が指摘されているが、本書ではそれらの影響を緩和する案も示されている。
最後にZone Ratingsは、本書の主筆でもあるJohn Dewanが1980年代に提案していたシステム。Plus/Minus Systemに近い考え方ではあるが、各打球の方向や速さ別にPlus/Minusを積んでいくのではなく、各ポジションのゾーン内に飛んできたボールの処理成功率を用いる。
もちろん各指標の説明だけではなく、メジャーリーグの主要な選手のデータがほぼ網羅されているので、データを眺めながらニヤニヤできる人には間違いなくお勧め。
ビジネスモデルを見える化する ピクト図解の要約版がiPhone Appとして提供されていたので読んでみた。完全版は$5.99だが、要約版のLiteは無償。
要約版しか読んでいないが、そのエッセンスはよく理解できる。要はモノとカネの流れに注目して図を書いてみようというだけなのだが、当たり前に見えても言われてみないとなかなか気付かないコロンブスの卵。
色々なジェスチャーが各国でどのような意味を持つかの調査結果。
20ヶ国を対象に50種類のジェスチャーに対する質問紙調査を行っているが、対象がアジア諸国に偏っておりその他の地域はやや少なめ。30年近く前の調査なので、今再調査すると異なる結果が出そう。また、あまりに学者然とした文章は好みが分かれるかもしれない。
ざっと眺めたところ、意外に世界中で似通った意味を持つジェスチャーが多いという印象。もちろん、日本でしか通じないジェスチャーもあるのだが、その多くは見るからに通用しなそうとわかるものばかりであまり大きな驚きはない。
夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子といった文豪達が残した紀行文から当時の大陸横断鉄道の様子を辿ろうという企画本。面白くないわけがない。
先週、自転車で転倒して左膝に怪我をしてしまった。打撲と裂傷だけで骨に異常はなさそうだったのと、出国前に予め破傷風や狂犬病等の予防接種を受けていたのとで自力で治療していたが、傷口が化膿し始めてしまったので、抗生物質を出してもらいにやむなく病院へ行ってきた。
出国時に契約していた保険会社に問い合わせ、保険が使える近所の診療所 (HealthWorks) を紹介してもらった。診療所は基本的に予約無しで診てもらえる。多くの診療所は平日昼間のみだが、一部の診療所は土日も開いている。また、保険会社と提携している医療機関のため、支払いの立て替えを行うことなく、請求を直接保険会社にまわしてもらうことができた。
診療所に着いて、IDと保険契約書を渡した後、問診票を記入する。問診票の内容自体は日本と大きく変わることがなく、持病やアレルギーの有無、飲酒や喫煙の習慣などを淡々と記入していく。米国的なのは、治療に関する情報を保険会社と共有することに合意する、などといった書類にいちいちサインをさせられること。それらを渡してからの待ち時間は小一時間ほど。
診療に入ってから感じたのは、日本の病院よりも分業が徹底しているということ。医者が出てくる前に、看護師による面談や体温・血圧の測定などが行われる。医者が行う作業は、本当に医者でなければできないことだけに限定されている。診断後の傷の処置も指示だけ出して実作業は看護師まかせ。両者のコストが大きく異なるので、こうするのが米国で言うところの合理的なのだろう。また、両者で明らかに肌の色の比率が異なるが性差は少ないのも米国的と言えるかもしれない。
処方箋を出してもらって別途薬局で薬を出してもらう仕組みも変わらない。いわゆるドラッグストアの他、大きめのスーパーにも調剤薬局が併設されていることが多く、薬の入手性は悪くない。また、薬を出してもらうときにその内容の説明を受けて合意したかどうかなど、いちいちサインを求められるのも米国的。
治療自体はCefalexin (Keflex) を処方してもらったおかげで、化膿が治まり、皮膚が再生してきた。念のために打撲の方も調べてもらったが、骨に異常なく2週間ほどで痛みも治まるだろうとのこと。
ちょうど昭和が終わる頃の日記。
残像に口紅をを執筆していた時期で、その生みの苦しみが伝わってくる。筒井康隆は買ってはあるが読んでいない本が多いのでそろそろ何とかしないと。
原書はまだセイバーメトリクスが普及する前の1989年の発行だが、今読んでも新鮮な内容が多い。
CERA (捕手防御率) 、エラー記録の欠点、タイ・カッブとピート・ローズの時代を超えた比較、ナックルボーラーの育成、ホーナス・ワグナーの再評価など、記録ヲタクには興味をそそられる内容ばかり。その中でも注目するべきは以下の2項目。
一つ目は多くの紙幅を割いている投手起用。メジャーリーグ黎明期から現在に至るまで、ルールや環境の変化が投手の寿命にどのような影響を与えてきたかを調査している。その手法はある種疫学的で、成長期 (25歳以前) の労働負荷が投手の寿命に大きな影響を与えることを発見している。また、負荷の推定において単純な投球回数に代わるBFS (Batter Faced Per Start) を考案することで限界を超えた負荷を見極めようとしているのも興味深い。
もう一つは、球場が成績に与える影響について。パークファクターのような単純な数値補正に止まらない深い考察は一読の価値がある。
翻訳は読みにくくはないものの、やや誤字が多いのが気になる。また、脚注はあるが歴史的なメジャーリーガーの名前をある程度知らないと読み辛いかもしれない。
セイバーメトリクスに興味のある人なら必ず読むべき本。
米国内のあまり存在を知られていない職業のカタログ。
目の付け所が良い企画だが、それ以上に職業人達の写真の質が高く (モノクロ写真補正アリ) 、それを眺めているだけでも楽しい。
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